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Profileプロフィール

  • 伊藤 明良

    略歴

  • 1978     茨城県生まれ
  • 1997-2001  神奈川大学工学部建築学科
  • 2001     同上 卒業
  • 2001-2003  神奈川大学工学研究科建築学専攻博士前期課程
  • 2003     同上 修了
  • 2004-2013  (有)シーネッツ一級建築士事務所 勤務
  • 2013-     伊藤明良一級建築士事務所 設立

    登録資格

  • 一級建築士登録    大臣登録第343152号
  • 一級建築士事務所登録 東京都知事登録第58714号

『家としての強度』

私が育った家は祖父母が建てた木造戸建住宅でした。ひとつ屋根の下で祖父母と父母+私たち兄姉で暮らしたこともありました。今思えば、玄関とトイレを除けば「ドア」が無く、ふすまや即興的な間仕切りで個室を調達したり、行事ごとにも対応していました。当時遊びに行けば、友人宅の核家族対応の個室が並べられてカチッとした家との違いに、子供ながらに我が家が不思議な家に思えてなりませんでした。我が家は当時でも大人数の家族でしたから、一時の不都合さはあったものの私たち子供らが独立していくまでの日常を包んでくれました。
やがて大学を経て建築に携わることになった私は実家をよく眺めることになります。古い写真や小屋裏をのぞいたり、図面を見てこの家の変遷を知ることになります。また、個室が無い、ドアが無い、、、と教科書通りでない私の実家は「~が無い」ことから考える住まいの豊かさを今でも教えてくれます。
今では築50年近いこの家は、子供ら世代家族や親せきが集う場として使い続けています。実家の周囲の環境は建て替えや引っ越しなどで状況が変わっていますが、実家は古ぼけてはいるものの、祖父の世代から私たち孫世代そしてその子供たちの世代まで引き受けようとしています。そこから見えてくるものは、建物の構造的な強さはもちろんですが、頑丈さだけではなく、時を経ても住まい方を限定しない自由を持ちあわせていることによる「家としての強度」の問題です。空間的な余白でもあり、時とともにその使い方を拡張できるような「冗長性」の重要性を実家のそのたたずまいが教えてくれています。
私のいえづくりは、住宅の寿命を考えるとき、構造的な強度だけでなく、住みながらえる「家としての強度」を考えていきたい。そう強く思っています。
そんな住まいを望む方がいらっしゃいましたら
是非そのお手伝いをさせて下さい。
もちろん、ここに挙げた私の実家は「私の家」という特殊解でもあり、実家に対するノスタルジーを完全に否定はできませんが。
それでも最近は、この実家にも建て替えか維持かを考える時期がきました。現代の住宅のライフサイクルを考えれば十分に消費したということになりますが、まだまだこの家の「家としての強度」の考察の時間が必要です。
建築という行為が膨大なエネルギーを消費し、圧倒的な量塊となって自然界に現れるものとした場合、家の新築はもちろん建て替えや維持を考えることはそのまま私たちの将来の生活環境に直結します。だからこそ住みながらえる「家としての強度」を考えることが非常に重要と考えます。

(2016.4.27.)